【宮沢賢治 絵本原画展】第38作
『双子の星』
作 ‖ 宮沢賢治 絵 ‖ 平澤朋子

 

会期 ‖ 2024年4月20日(土) – 6月2日(日)
会場 ‖ フリッツ・アートセンター / ギャラリー
休館日 ‖ 火曜日(5/25(土)「森 ゆに 演奏会」のため休館)
時 間 ‖ 11:00-18:00
入館料 ‖ 無料

 

【関連イベント】
《公園のおはなし会》参加自由・無料
◯ 4月28日(日) 13:30 平澤朋子・ ドロップス
◯ 5月5日(日) 13:30 水と青(うたとピアノ)
◯ 5月19日(日) 13:30 ドロップス 他
他未定
《LIVE》
◉ 森 ゆに 演奏会『星めぐりの歌』
5月25日(土) 開演 18:30(開場 18:00)
✳︎ チケット等 詳しくは HPを。

 

 

 

チュンセ童子とポウセ童子という双子の星のお役目は、空の星めぐりの歌に合わせて、銀笛を吹くこと。
ところがある日、天空の星同士の争いや、やってきた彗星のたくらみにまきこまれ、思いもかけないことに ….。

 

2008年に始められた『宮沢賢治絵本原画展』も、38作目の開催となりました。
今回は、イーハトーブの星空から生まれた、天空と海底までをかけめぐる賢治童話 最初期の傑作『双子の星』。
人気の絵本作家・イラストレーターの平澤朋子さんが、銀笛を吹く童子たちの無垢さと、カラスやさそりやほうき星たちの邪悪さを、大胆にそして繊細に描ききりました。
◎ 使用画材:水彩・マーカー・顔彩・色鉛筆 / 水彩紙(キャンソンヘリテージ)

 

 

作者プロフィール ‖
絵 : 平澤朋子 ひらさわともこ
1982年、東京都生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。イラストレータ―として児童書を中心に活動。
絵本に『巨人の花よめ』(文・菱木晃子 BL出版)。挿絵や挿画をてがけた作品に『緑の模様画』(作・高楼 方子 福音館)、「ニルスが出会った物語」シリーズ(原作・セルマ・ラーゲルレーヴ 訳・構成・菱木晃子 福音館)、『わたしのしゅうぜん横町』(作・西川紀子 ゴブリン書房)、『トムと3時の小人』(作・たかどのほうこ ポプラ社)、『オンボロやしきの人形たち』(作・フランシス・ホジソン・バーネット  訳・尾﨑愛子 徳間書店)、『いもうとなんかいらない』(作・ ロイス・ダンカン 訳・小宮 由 岩波書店)、「名探偵カッレ」シリーズ(作・アストリッド・リンドグレーン 訳・ 菱木 晃子  岩波書店)、「トゥートゥルとふしぎな友だち」シリーズ(作・湯 湯  訳・髙野 素子 あかね書房)、『しずかな魔女』(作・市川 朔久子 岩崎書店)、『シリアからきたバレリーナ』(作・キャサリン・ブルートン 訳・尾﨑愛子 偕成社)など多数。

 

 

《過去の開催 : 2008年3月-2023年1月》
◉01『注文の多い料理店』スズキコージ ◉02『雪わたり』方緒 良 ◉03『どんぐりと山猫』田島征三 ◉04『やまなし』川上和生 ◉05『なめとこ山の熊』あべ弘士 ◉06『オツベルと象』荒井良二 ◉07『よだかの星』ささめやゆき ◉08『狼森と笊森、盗森』片山 健 ◉09『いちょうの実』及川賢治 ◉10『ツェねずみ』石井聖岳 ◉11『月夜のでんしんばしら』竹内通雅 ◉12『山男の四月』飯野和好 ◉13『気のいい火山弾』田中清代 ◉14『土神ときつね』大畑いくの ◉15『蛙のゴム靴』松成真理子 ◉16『氷河鼠の毛皮』堀川理万子 ◉17『寓話 洞熊学校を卒業した三人』大島妙子 ◉18『セロ弾きのゴーシュ』さとうあや ◉19『銀河鉄道の夜』金井一郎 ◉20『黄いろのトマト』降矢なな ◉21『虔十公園林』伊藤秀男 ◉22『猫の事務所』植垣歩子 ◉23『ひのきとひなげし』出久根育 ◉24『カイロ団長』こしだミカ ◉25『フランドン農学校の豚』nakaban・26『雨ニモマケズ』柚木沙弥郎 ◉27『貝の火』おくはらゆめ ◉28『ざしき童子のはなし』岡田千晶 ◉29『鹿踊りのはじまり』ミロコマチコ ◉30『風の又三郎』やぎたみこ ◉31『おきなぐさ』陣崎草子 ◉32『鳥箱先生とフゥねずみ』吉田尚令 ◉33『ポラーノの広場』みやこしあきこ ◉34『シグナルとシグナレス』山口マオ ◉35『北守将軍と三人兄弟の医者』スズキコージ ◉36『茨海小学校』西村繁男 ◉37『毒もみのすきな署長さん』山村浩二

 
 

ミキハウス ◎ フリッツ・アートセンター 協働事業
後援 ‖ 群馬県・群馬県教育委員会・前橋市・前橋市教育委員会・各報道機関

 

 

ものがたり

1985年「カフェ」 1993年「本屋」 2009年「映画館」 2014年「the place」
そして 2019年〈絵本みたいな場所〉へ

〈絵本みたいな場所〉という物語は、1985年の “カフェ RITZ" からはじまります。
大きな公園の森のなかの、石でできた四角いおとこの建物です。
30種類のオムレツとキッシュと庭の結婚式が評判のカフェでした。
しばらくして、ひとりぼっちだった RITZ にパートナーができます。
すぐとなり、百年の杉の木の下の、赤くてまるいおんなの子の建物で、
RITZ に女性の「F」をつけて "F-ritz art center" と名づけることにしました。1993年のことです。
その時の《1+1=1》というコンセプトは、より多くとか、より早くとか、より高くということではなく、
変らぬ毎日の営みのなかで、すこしずつ円周を拡げていこうとするものです。
そう、ひとつの水滴にもうひとつの水滴を置いていくかのように …。

『絵本屋』『タンタン・ボックス 前橋店』『ポスター・ボックス』
『美容室』LE SALON、『家具屋』RETRO BOX .....。

「クリスチャン・ボルタンスキー展」と「くまのプーさん絵本原画展」をオープニングにしたギャラリーでは、
数多くの新たな表現が生まれています。
《賢治の全童話を絵本に》と始められた「宮沢賢治絵本原画展」も、第十三期30作目になります。
同時に《街を 街そのものを美術館に 劇場に》を合い言葉に、街にも出かけて行くようになります。
家具店跡をギャラリーに、スーパーマーケット跡を劇場に、商店街の通りをサーカス会場に、
百貨店跡をパフォーマンス・スペースに、アーケード内を映画館に、県庁前広場をキャンプ場に、
銀行跡をライヴ会場に、消防署跡をアートセンターに ...。
空き地で子どもたちが新しい遊びを発明するように、使いかたを工夫しながら、
アートによって空間を再生していこうとする、壊しては作るという時代への抵抗の始まりです。
2009年には空きデパートの中の映画館跡を再生。
地方では珍しい名画座として「シネマまえばし」を開館します。
これは《1回 一万人というイベントではなく 毎日30人1年で一万人を 街に》というコンセプトで、
失われつつある「日常性」と「つながりあう気持ち」をゆっくりと恢復していこうとするものです。

そして、フリッツ・アートセンターは 今。
成長に代わるまったく新しい豊かさのあり方を見つけるために、
35年かけて創った小さな物語と、そこから生まれた価値観を見直し、
未来から今を思い描き、変化を恐れずに、また動いて行こうと思います。
考え過ぎると厄介なことになると知っていて、何を見ても無感覚でいなくてはならないような時代に生きて。
たとえ小さくても、ここからだけしかできない「確かなこと」と「生きやすい」場所への鍛え直し。
主流や時流や大きな力に、抗うことでも、拠ることでもなく、
ただ『絵本みたいな場所』という新しい眺めをつくってみること。

《絵本みたいな場所》

絵本作家・ミロコマチコさんが、シンガー・あがた森魚さんの宮沢賢治朗読で、ライブペインティングした15個の本棚。
フランスから10トンもあるパン窯を運んで建った〈公園の薪窯パン屋〉の開店。前庭にたくさんの子どもたちと植えた〈百年のモミの木〉と、地面そのものを〈花花の椅子〉にするために育てるクレピア ....。
日替わりで若いロースターが淹れる〈コーヒースタンド〉のセルフビルド。中庭に、若い人たちと掘る、小鳥たちのための〈そらの井戸〉と、檸檬の苗木をたくさん植え造る〈果樹園〉。
そして、絵本作家・荒井良二さんと、共に紡ぎ始める「願いが叶う庭」、〈カナウニワ〉の国の物語。

『カナウニワ』

この場所はきっといつかの夏の日。薪窯で焼けたばかりのライ麦パンと、井戸水と獲れたばかりの檸檬を絞ったレモネードと、古い古いお話の絵本を抱えた子どもたちが、50メートルにもなるモミの木の下で、近くの森での遊びの相談をしているわけで。

そんな木陰を 今からつくっておきたい。

あまりにもきれいな夕焼けに立ち止まってみること。
あまりにも美味しいいつもの水に驚いてみること。
そして、それを誰かに伝えようとする気持ち。
あたらしいひと。あたらしい世界。あたらしい幸福。
街の喧噪の、森の静寂の中、遠くを旅するより、近くを冒険するひとのために。
大好きだと言えるひとのために。その笑顔のために。
そして、
子どもたちの 子どもたちの 子どもたちのために。

フリッツ・アートセンター