『このほしのこども』吉田尚令 絵本原画展
+ 「ガザ.  パレスチナ」アメル・ナーセル 写真展

 

会 期 ‖ 2025年3月15日(土) – 5月6日(火・祝)
会 場 ‖ フリッツ・アートセンター / ギャラリー
    〒371-0036  前橋市敷島町240-28
    Tel. 027-235-8989
    web. theplace1985.com
    mail. info@theplace1985.com
休館日 ‖ 火曜日(祭日の時ははその翌日)
>時 間 ‖ 11:00-18:00
入館料 ‖ 無料

 

 

この星のあちこちで、こどもたちが苦しい状況のなかで助けをもとめている。いったいなにを、どうすれば、平和な日々をつかめるのだろう ….。
世界中のこどもたちが、なにごともないおだやかな毎日をすごせるように、絵本作家の吉田尚令が願いをこめて描いた絵本『このほしのこども』の原画と、絵本制作にあたって描かれたラフ画などを展示。
また、ガザ在住のパレスチナ人写真家・映画監督の アメル・ナーセル(Amer Nasser)が、爆撃で家や町が破壊される中、ガザで生きる人たちの今を写した写真を多数展示。
(アメルさんは爆撃により自らの表現手段であるカメラや コンピュータを失いました。爆撃と飢餓の中、手元に残されたスマートフォンで日々の映像や写真を ソーシャルメディアで発信し続けています / 2025.1.15 現在)

 

 

 

©️AmerNasser

プロフィール ‖
吉田尚令 よしだひさのり
1971年、大阪府生まれ。イラストレーター。絵本や書籍の挿画などを手がける。
主な絵本に、『希望の牧場』(作:森絵都)、『パパのしごとはわるものです』(作:板橋雅弘)、『悪い本』(作 : 宮部みゆき / すべて岩崎書店)、『はるとあき』(作:斉藤倫 うきまる / 小学館)、『星につたえて』(文:安東 みきえ / アリス館)、挿画に、「雨ふる本屋」シリーズ(作: 日向理恵子 / 童心社)などがある。

 

アメル・ナーセル Amer Nasser
1991年生まれ、ガザ出身のパレスチナ人写真家・映画監督。パレスチナ難民の現実や、ガザにおけるパレスチ ナ人の政治的・社会的・経済的状況を描いた映画を製作・監督するほか、UNRWA(パレスチナ難民の ための国連機関)チャンネルのプロデューサーを務める。 ドバイ国際映画祭やアレクサンドリア映画祭 に出品された『Sara』(長編、2014年)や『Gaza Small Studio』(2015年)など、ドキュメンタリー 映画やフィクション作品の製作・監督を手がける。
2016年、プロデュース作品『Paper Boat』がパリの アラブ世界研究所で開催されたPalest’In & Out Festivalで最優秀作品賞を受賞。また、助監督を務めた短編映画『Condom Lead』は、2013年の第66回カンヌ国際映画祭の短編映画部門に出品。2023年には、パリのアラブ世界研究所で開催された展覧会「What Palestine Brings to the World」に写真作品を出品している。
2024年、11月東京藝術大学大学会館、日本初展覧会『GAZA.SIGNAL OF LIFE』展(共催:東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科 毛利嘉孝研究室)

 

協 力 ‖ Gaza. Signal of Life 実行委員会・あかね書房
後 援 ‖ 群馬県・群馬県教育委員会・前橋市・前橋市教育委員会・各報道機関

 

ものがたり

1985年「カフェ」 1993年「本屋」 2009年「映画館」 2014年「the place」
そして 2019年〈絵本みたいな場所〉へ

〈絵本みたいな場所〉という物語は、1985年の “カフェ RITZ" からはじまります。
大きな公園の森のなかの、石でできた四角いおとこの建物です。
30種類のオムレツとキッシュと庭の結婚式が評判のカフェでした。
しばらくして、ひとりぼっちだった RITZ にパートナーができます。
すぐとなり、百年の杉の木の下の、赤くてまるいおんなの子の建物で、
RITZ に女性の「F」をつけて "F-ritz art center" と名づけることにしました。1993年のことです。
その時の《1+1=1》というコンセプトは、より多くとか、より早くとか、より高くということではなく、
変らぬ毎日の営みのなかで、すこしずつ円周を拡げていこうとするものです。
そう、ひとつの水滴にもうひとつの水滴を置いていくかのように …。

『絵本屋』『タンタン・ボックス 前橋店』『ポスター・ボックス』
『美容室』LE SALON、『家具屋』RETRO BOX .....。

「クリスチャン・ボルタンスキー展」と「くまのプーさん絵本原画展」をオープニングにしたギャラリーでは、
数多くの新たな表現が生まれています。
《賢治の全童話を絵本に》と始められた「宮沢賢治絵本原画展」も、第十三期30作目になります。
同時に《街を 街そのものを美術館に 劇場に》を合い言葉に、街にも出かけて行くようになります。
家具店跡をギャラリーに、スーパーマーケット跡を劇場に、商店街の通りをサーカス会場に、
百貨店跡をパフォーマンス・スペースに、アーケード内を映画館に、県庁前広場をキャンプ場に、
銀行跡をライヴ会場に、消防署跡をアートセンターに ...。
空き地で子どもたちが新しい遊びを発明するように、使いかたを工夫しながら、
アートによって空間を再生していこうとする、壊しては作るという時代への抵抗の始まりです。
2009年には空きデパートの中の映画館跡を再生。
地方では珍しい名画座として「シネマまえばし」を開館します。
これは《1回 一万人というイベントではなく 毎日30人1年で一万人を 街に》というコンセプトで、
失われつつある「日常性」と「つながりあう気持ち」をゆっくりと恢復していこうとするものです。

そして、フリッツ・アートセンターは 今。
成長に代わるまったく新しい豊かさのあり方を見つけるために、
35年かけて創った小さな物語と、そこから生まれた価値観を見直し、
未来から今を思い描き、変化を恐れずに、また動いて行こうと思います。
考え過ぎると厄介なことになると知っていて、何を見ても無感覚でいなくてはならないような時代に生きて。
たとえ小さくても、ここからだけしかできない「確かなこと」と「生きやすい」場所への鍛え直し。
主流や時流や大きな力に、抗うことでも、拠ることでもなく、
ただ『絵本みたいな場所』という新しい眺めをつくってみること。

《絵本みたいな場所》

絵本作家・ミロコマチコさんが、シンガー・あがた森魚さんの宮沢賢治朗読で、ライブペインティングした15個の本棚。
フランスから10トンもあるパン窯を運んで建った〈公園の薪窯パン屋〉の開店。前庭にたくさんの子どもたちと植えた〈百年のモミの木〉と、地面そのものを〈花花の椅子〉にするために育てるクレピア ....。
日替わりで若いロースターが淹れる〈コーヒースタンド〉のセルフビルド。中庭に、若い人たちと掘る、小鳥たちのための〈そらの井戸〉と、檸檬の苗木をたくさん植え造る〈果樹園〉。
そして、絵本作家・荒井良二さんと、共に紡ぎ始める「願いが叶う庭」、〈カナウニワ〉の国の物語。

『カナウニワ』

この場所はきっといつかの夏の日。薪窯で焼けたばかりのライ麦パンと、井戸水と獲れたばかりの檸檬を絞ったレモネードと、古い古いお話の絵本を抱えた子どもたちが、50メートルにもなるモミの木の下で、近くの森での遊びの相談をしているわけで。

そんな木陰を 今からつくっておきたい。

あまりにもきれいな夕焼けに立ち止まってみること。
あまりにも美味しいいつもの水に驚いてみること。
そして、それを誰かに伝えようとする気持ち。
あたらしいひと。あたらしい世界。あたらしい幸福。
街の喧噪の、森の静寂の中、遠くを旅するより、近くを冒険するひとのために。
大好きだと言えるひとのために。その笑顔のために。
そして、
子どもたちの 子どもたちの 子どもたちのために。

フリッツ・アートセンター