寺尾紗穂 LIVE
歌が生まれる場所〈前橋・北軽井沢〉

歌の生まれる場所は、どんな場所だろう。
私たちが聴きたいのは、時代に向かう強さと内面に響く弱さを内包する歌だ。そんな歌を欲するメンバーが集まり「歌の生まれる場所」音楽会は生まれた。絵本を中心に人々が集い今年30年目を迎えるフリッツ・アートセンター、復活したピアノ「グロトリアン・シュタインヴェーグ」を奏でる北軽井沢ミュージックホール。愛がある場所で、人と人とが顔を合わせ、時間を共にする。そこはきっと、歌の生まれる場所になる―――

日 時 ‖
〈前橋〉
4月15日(土)開場 17:30 | 開演 18:00
〈北軽井沢〉
4月16日(日)開場 13:00 | 開演 13:30

場 所 ‖
15日(土)〈前橋〉
フリッツ・アートセンター
群馬県前橋市敷島町240-28(敷島公園内)

16日(日)〈北軽井沢〉
北軽井沢ミュージックホール
群馬県吾妻郡長野原町大字北軽井沢町1988-74

料 金 ‖
前売 4.000 円 / 当日 4.500 円(税込み)
〈前橋〉小学生無料(要予約・未就学児入場不可)
〈北軽井沢〉小学生以下無料(要予約)

◉ チケット販売開始 ‖ 3月1日(水)10:00

・オンライン予約:LivePocket(アドレスは近日公開します)
・電話予約:(前橋公演のみ)
  027-235-8989(火曜日を除く11:00 – 18:00)
・店頭販売:
  フリッツ・アートセンター(前橋市)
  ルオムの森(北軽井沢)
  REBEL BOOKS(高崎市)
 * 店頭販売は数に限りがあります。売り切れ次第に終了いたします。

プロフィール ‖
寺尾紗穂 Saho Terao
1981年東京生まれ。2007年ピアノ弾き語りアルバム「御身」でデビュー。大林宣彦監督の「転校生 さよならあなた」、安藤桃子監督の「0.5ミリ」など主題歌の提供やCM音楽制作(KDDI、JA共済など)、日本経済新聞でのコラム連載や、その他ウェブ連載も多い。
土地に埋れた古謡の発掘、リアレンジしての音楽発信をライフワークとし、『ミュージック・マガジン』誌での「寺尾紗穂の戦前音楽探訪」を連載中。松本の浅間温泉の「ユアリテ」や高知須崎の「現代地方譚」など各地のアート・プロジェクトに招聘され、リサーチを経ての表現活動も増えている。2022年NHKのドキュメンタリー番組「Dearにっぽん」のテーマ曲に「魔法みたいに」が選ばれ、教科書『高校生の音楽Ⅰ』(教育芸術社)にも同曲が掲載される。最新刊は『天使日記』(スタンドブックス) 、アルバム近作は「余白のメロディ」。2023年には10回目となる「りんりんふぇす」(『BIG ISSUE』を応援する音楽フェス)を青山梅窓院で開催。2月に石川直樹(写真)、三好大輔(映像)と共に知床斜里の8ミリフィルム映画「斜里 昭和ノ映写室」のサウンドトラック「流した涙の数だけ美しい虹がたつ」を発表。タイトル曲は寺尾が斜里でのライブ前に、開拓の苦労をよんだ地元の女性の詩を図書館で見つけ、曲をつけたもの。

ものがたり

1985年「カフェ」 1993年「本屋」 2009年「映画館」 2014年「the place」
そして 2019年〈絵本みたいな場所〉へ

〈絵本みたいな場所〉という物語は、1985年の “カフェ RITZ" からはじまります。
大きな公園の森のなかの、石でできた四角いおとこの建物です。
30種類のオムレツとキッシュと庭の結婚式が評判のカフェでした。
しばらくして、ひとりぼっちだった RITZ にパートナーができます。
すぐとなり、百年の杉の木の下の、赤くてまるいおんなの子の建物で、
RITZ に女性の「F」をつけて "F-ritz art center" と名づけることにしました。1993年のことです。
その時の《1+1=1》というコンセプトは、より多くとか、より早くとか、より高くということではなく、
変らぬ毎日の営みのなかで、すこしずつ円周を拡げていこうとするものです。
そう、ひとつの水滴にもうひとつの水滴を置いていくかのように …。

『絵本屋』『タンタン・ボックス 前橋店』『ポスター・ボックス』
『美容室』LE SALON、『家具屋』RETRO BOX .....。

「クリスチャン・ボルタンスキー展」と「くまのプーさん絵本原画展」をオープニングにしたギャラリーでは、
数多くの新たな表現が生まれています。
《賢治の全童話を絵本に》と始められた「宮沢賢治絵本原画展」も、第十三期30作目になります。
同時に《街を 街そのものを美術館に 劇場に》を合い言葉に、街にも出かけて行くようになります。
家具店跡をギャラリーに、スーパーマーケット跡を劇場に、商店街の通りをサーカス会場に、
百貨店跡をパフォーマンス・スペースに、アーケード内を映画館に、県庁前広場をキャンプ場に、
銀行跡をライヴ会場に、消防署跡をアートセンターに ...。
空き地で子どもたちが新しい遊びを発明するように、使いかたを工夫しながら、
アートによって空間を再生していこうとする、壊しては作るという時代への抵抗の始まりです。
2009年には空きデパートの中の映画館跡を再生。
地方では珍しい名画座として「シネマまえばし」を開館します。
これは《1回 一万人というイベントではなく 毎日30人1年で一万人を 街に》というコンセプトで、
失われつつある「日常性」と「つながりあう気持ち」をゆっくりと恢復していこうとするものです。

そして、フリッツ・アートセンターは 今。
成長に代わるまったく新しい豊かさのあり方を見つけるために、
35年かけて創った小さな物語と、そこから生まれた価値観を見直し、
未来から今を思い描き、変化を恐れずに、また動いて行こうと思います。
考え過ぎると厄介なことになると知っていて、何を見ても無感覚でいなくてはならないような時代に生きて。
たとえ小さくても、ここからだけしかできない「確かなこと」と「生きやすい」場所への鍛え直し。
主流や時流や大きな力に、抗うことでも、拠ることでもなく、
ただ『絵本みたいな場所』という新しい眺めをつくってみること。

《絵本みたいな場所》

絵本作家・ミロコマチコさんが、シンガー・あがた森魚さんの宮沢賢治朗読で、ライブペインティングした15個の本棚。
フランスから10トンもあるパン窯を運んで建った〈公園の薪窯パン屋〉の開店。前庭にたくさんの子どもたちと植えた〈百年のモミの木〉と、地面そのものを〈花花の椅子〉にするために育てるクレピア ....。
日替わりで若いロースターが淹れる〈コーヒースタンド〉のセルフビルド。中庭に、若い人たちと掘る、小鳥たちのための〈そらの井戸〉と、檸檬の苗木をたくさん植え造る〈果樹園〉。
そして、絵本作家・荒井良二さんと、共に紡ぎ始める「願いが叶う庭」、〈カナウニワ〉の国の物語。

『カナウニワ』

この場所はきっといつかの夏の日。薪窯で焼けたばかりのライ麦パンと、井戸水と獲れたばかりの檸檬を絞ったレモネードと、古い古いお話の絵本を抱えた子どもたちが、50メートルにもなるモミの木の下で、近くの森での遊びの相談をしているわけで。

そんな木陰を 今からつくっておきたい。

あまりにもきれいな夕焼けに立ち止まってみること。
あまりにも美味しいいつもの水に驚いてみること。
そして、それを誰かに伝えようとする気持ち。
あたらしいひと。あたらしい世界。あたらしい幸福。
街の喧噪の、森の静寂の中、遠くを旅するより、近くを冒険するひとのために。
大好きだと言えるひとのために。その笑顔のために。
そして、
子どもたちの 子どもたちの 子どもたちのために。

フリッツ・アートセンター